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 暦の上では春だが、外に出れば雪まじりの寒い日が続く。とは言うものの、今日の新聞では、秋田のソメイヨシノの開花予報は秋田市の千秋公園4月18日、角館の桧木内川堤は26日とのこと。
まだまだ寒そうな日々が続くので、当分は熱燗が楽しめそうだ。今日は、秋田駅前の土産コーナーで買った「はたはたひれ酒」で一杯やろう。
 最初に感心したことは、「ひれ酒」にハタハタのヒレを使ったことだ(写真1)。普通、ひれ酒と言えばフグのひれ酒であり、高級なものはトラフグを使うが(写真2)、それをハタハタで作ったことが素晴らしい。
箱を見る。表は赤色の地に白で「男鹿の」と書き、真ん中に黒で太く「はたはたひれ酒」とある。これで「ハタハタ」と「男鹿」と「酒」の三位一体、一目瞭然だ。しかし、その下方にあるハタハタの絵に関しては、顔やヒレの形や模様が違っているようだ。去年、我々の協会が行った「地魚・旬の魚検定試験」で、ハタハタの上顎と下顎はどちらが長いか、という問題があったが、ハタハタの顔をよく見て欲しい。
次に横を見る。「はたはたひれ酒セット」という名前の以下、名称「はたはたひれ(干物)」、原材料名「秋田県男鹿産」、内容量「ひれ2枚」と書いており、もう一つには品目「清酒」、内容量「200ml」となっている。まさにその通りだ。
 中身を出すとワンカップがあり、その隣にヒレがある(写真3)。そして、鰭をよく見ると、「これは何だ」、「すごい」と驚くことになる(写真4)。普通、ひれ酒に使うフグの鰭は、背鰭、尾鰭、胸鰭で、厚かったり薄かったり様々だ(写真5)。
 これに対して、はたはたひれ酒に使うヒレは胸鰭だけだ。じっくり見ると、薄く透明で美しく、体に比してその大きさに驚く。あらためて、ハタハタの胸鰭はこんなにも大きかったのか、と思う。考えてみると、ハタハタは回遊魚だということに気づく。日本海を広く行動するためには、大きな胸鰭が必要なのだ。実際、水族館でハタハタの動きを見ると、胸鰭を蝶々の羽のようにゆっくりと動かしながら泳いでいることがわかる(写真6)。
はたはたのひれ酒を飲みながら、秋田県のハタハタ漁獲量が平成3年には70トンまで激減したこと、しかし翌4年から丸3年間の全面禁漁を行い最近は1千トンまで回復したこと、そしてハタハタのしょっつる鍋やはたはたずしのことなど考えていると、切りがなくなってしまう。
 結局、僕たちが神の魚、ハタハタを持っているからこそ、この「はたはたひれ酒」を楽しむことができるのだ、ということに思い至る。この酒を、ゆっくりと楽しもう。

写真1 はたはたひれ酒の箱 写真2 とらふくひれ:トラフグのヒレ
写真3 はたはたひれ酒のヒレとワンカップ 写真4 ハタハタの2枚の胸鰭
写真5 トラフグのヒレ 写真6 上から見たハタハタの姿
ハタハタの多様な世界
K はたはたひれ酒
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