おもに河口付近で見られる魚類
ゼニタナゴ ニホンウナギ Anguilla japonica
環境省:絶滅危惧IB類、秋田県:―

 ニホンウナギには海域で一生を過ごす個体と、海域から河川に遡上し成長した後、産卵のため再び海域へ下る個体の存在が知られています。最近の研究から、産卵場であるマリアナ海溝で捕獲されたニホンウナギ13 個体すべてにおいて、河川感潮域(流速や水位が潮の干満の影響を受けて変動する場所)に生息していた証拠が確認されました。これにより河川へ遡上する個体が産卵に大きく寄与していることが確かめられました。漁獲量を元に調べたところ、過去3世代の間に50%以上も減少していると推定されています。
マルタ Tribolodon brandtii
環境省:絶滅のおそれのある地域個体群
秋田県:
絶滅危惧種U類

 
最大で50cmほどになるウグイの仲間です。県内では3大河川や県南部の独立河川で確認されています。婚姻色は、頬から尾のつけ根まで体側の下部に朱色縦帯が1本だけ現れます。稚魚は河川とつながる沼でも確認されています。
 河口・下流域におけるコンクリート護岸化などにより生息場所が失われる可能性があります。
イトヨ日本海型 
Gasterosteus aculeatus aculeatus
環境省:絶滅のおそれのある地域個体群
秋田県:絶滅危惧種U類

 背ビレの前に3本の棘があることから、英語では"three-spined stickleback"(3本の棘をもつトゲウオ)といいます。
 県内でも八郎湖や米代川、雄物川などで漁獲されていましたが、今では激減しておりほとんど見られなくなってしまいました。
カマキリ(アユカケ) Cottus kazika
環境省:絶滅危惧U類、秋田県:絶滅危惧種U類

 日本固有種で、秋田県内では比較的広い範囲に分布していますが、生息する個体数は少ないようです。11〜12月に親は海に下って、1〜2月に沿岸で産卵します。2cmほどの大きさになると川に上ります。生息場所が、比較的水量のある清澄な水域に限定されるため、河川改修などにより、壊滅的な打撃を受ける可能性があります。
カジカ中卵型 Cottus
環境省:絶滅危惧IB類、秋田県:絶滅危惧種IB類

 日本固有種で、河口が礫底の清澄な水域をもつ場所に生息します。塩分耐性をもち、海と川を行き来します。カジカ大卵型とは、胸ビレの定数が13〜16本と多いことで区別できます。
 もともと生息数が少ないことに加えて、河口・下流域のコンクリート護岸や流路の直線化などの影響により個体数が著しく減少しています。
カンキョウカジカ Cottus hangiongensis
環境省:絶滅のおそれのある地域個体群
秋田県:
絶滅危惧種U類

 朝鮮半島から日本海北部に分布していますが、河口部が礫底で清澄な水域の小河川のみで確認されます。ハナカジカと同様に腹ビレに縞模様がありますが、胸ビレの条は分岐していません。
 両側回遊型(海と川を行き来する)の生活史であるため、改修工事などの影響を大きく受けてしまいます。
クルメサヨリ Acheilognathus tabira tohokuensis
環境省:準絶滅危惧種、秋田県:

 最大で20cmになり汽水域に生息します。下顎が頭長よりも長いことや、下顎の下面が赤くないことで、サヨリと区別できます。護岸によるアシなどの抽水植物群落の消失や水質汚濁によって生息環境が悪化しているようです。
 県内では八郎湖で見られます。
シロウオ Leucopsarion petersii
環境省:絶滅危惧U類、秋田県:準絶滅危惧種

 シラウオとは、全くの別種でハゼの仲間です。他のハゼの仲間とは異なり、第一背ビレがありません。体が白色半透明なので、背骨、浮袋、卵巣などを外部から観察することができます。波の穏やかな沿岸の浅い所で生活し、群れで底近くを遊泳します。春に海から遡上して、河口付近の砂礫に巣穴を掘って産卵します。
ミミズハゼ
環境省:―、秋田県:準絶滅危惧種

 
河口付近に生息しています。最近になって分類が進んできた仲間で、生態などの詳しいことはよく分かっていません。
 多くの河川で生息数が減少しています。小河川の河口部の工事や下流部の床固めや落差工ができると生息に大きな影響を与えます。
ヒモハゼ Eutaeniichthys gilli
環境省:準絶滅危惧種、秋田県:―

 
名前の通り、ヒモのように細長い体をしています。体側に1本の黒色縦帯があるのが特徴です。河口部に形成される干潟の砂底に生息します。
 埋め立てや護岸工事、水質汚染などにより減少傾向にあるようです。
スミウキゴリ Gymnogobius petschiliensis
環境省:絶滅のおそれのある地域個体群
秋田県:準絶滅危惧種

 
県内には3種類のウキゴリ類が分布していますが、第1背ビレ後端に黒斑がないことや、尾柄(尾びれのつけ根)の黒斑が大きいことで識別できます。いくつかの小河川の河口付近に生息しますが、その数は少ないようです。
 両側回遊(海と川を行き来する)の生活をすることから、下流を含む河口域の安定した環境が重要です。最近では、河川工事や水質悪化などにより個体数が激減しています。
ビリンゴ Chaenogobius castaneus
環境省:―、秋田県:準絶滅危惧種

 
大河川の河口を中心に生息していますが、最近ではほとんど確認できなくなりました。もともと個体数は少なく、年変動も大きいようです。河口域のアシなどの抽水植物が生育する砂泥域の減少や環境の悪化などにより個体数が著しく減少しているようです。
チチブ Trideentiger obscurus
環境省:―、秋田県:絶滅危惧種IB類

 
独立河川の河口付近でわずかに確認されています。近縁種のヌマチチブとは形態的によく似ているため、なれていないと識別は困難です。また、県外ではヌマチチブとの雑種が確認されている地域もあることから、今後、詳しく調査していく必要があります。
 河口部の工事や下流部の床固めや落差工ができると生息に大きな影響を与えます。

レッドリストカテゴリーと基本概念
 絶滅危惧IA類 (CR):絶滅の危機に瀕しており、ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの。
 絶滅危惧IB類 (EN):絶滅の危機に瀕しており、IA類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が
          高いもの。
 絶滅危惧U類 (VU):絶滅の危険が増大している種
 準絶滅危惧 (NT):存続基盤が脆弱な種
 情報不足 (DD):評価するだけの情報が不足している種
 絶滅のおそれのある地域個体群 (LP):地域的に孤立している個体群で、絶滅のおそれが高いもの。

秋田の水生生物
河川で見られる魚類  河口付近で見られる魚類  湧水・水路で見られる魚類  池沼・溜池で見られる魚類
限られた地域で見られる魚類

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